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灰野敬二 & 森田潤 / EIJI HAINO & JUN MORITA [CD]

価格: 2,750円(税込)

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Label: Les disques dʼAilleurs

素晴らしいデュオ録音!!

これは、世界の根源と調和について考え続けてきた二人の音楽家が対話した貴重な記録である。
灰野敬二は70年代から現在まで半世紀以上にわたり、シンガーとして、マルチ・プレイヤー(ギター、各種打楽器、民族楽器、電子機器 etc.)として、膨大な数の録音物を発表してきた。そのサウンド・スタイルや演奏形態は驚くほど多彩だが、一貫しているのは、彼が“音楽の始原”という一点だけを見つめてきたということだ。どんな楽器を使っても、いかなる状況下での演奏であっても、そこには“音楽が初めて生まれる瞬間”が輝き、音楽の自在な呼吸と変容を我々は確認することができる。灰野の音楽は常にまっさらな状態から起ち上がり、過去をなぞることがけっしてない。

一方、人気DJとして知られる森田潤は、10年ほど前からは、主にモジュラー・シンセサイザーを用いるパフォーマー/作曲家としての活動に注力してきた。彼がモジュラー・シンセにこだわるのは、理論や想像を超える未知のサウンドをゼロの状態から手作りできるからだ。森田もまた、音楽の始原を見つめる探求者である。8年ほど前にあるライヴ・イヴェントで灰野と知りあった森田がコラボCDの制作を提案し、本作が録音されたのは2018年のことだ。ここには6曲が収録されているが、1曲目「I」と、2曲目「II」以下の5曲は、制作手順が異なる。「I」は森田があらかじめモジュラー・シンセで作った中央アジア〜中東系サウンドに灰野が即興ヴォイスで応じたものだが、「II」以下の5曲はまず灰野がソロ演奏(ヴォイス、ギター、ハルモニウム、ポリゴノーラ)を録音し、そこに森田がモジュラー・シンセやエレクトリック・ヴァイオリン(「VI」のピチカート)で肉付けして完成したものだ。「II」で用いられているポリゴノーラは、植物生理学者の櫻井直樹が考案した、様々な形(円、四角、三角などの板)の青銅製パーカッションだが、西欧型の音楽理論や概念ではとらえきれない響きとハーモニーを生み出す楽器として灰野は以前からしばしば用いてきた。これに限らずいずれの楽曲においても灰野の演奏は精妙極まりないが、その精妙さに慎重に寄り添いつつハーモニーの自律と有機的展開を心がけた森田のサウンド・プロダクションも見事だ。

一発録りのライヴ作品ではない、微細に彫琢されたレコーディング・ワークという点で、灰野のキャリアにおいても貴重な1枚と言っていいだろう。
松山晋也(音楽評論家)

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